実家じまいという言葉で検索して、いくつもブログを読んだ。
大変さは伝わってきた。寂しさも分かった。
それなのに、自分の実家をどうするかは、何ひとつ決まらないまま。
そんな状態でこのページにたどり着いた方が多いのではないでしょうか。
先に結論をお伝えします。
実家は、片付けも修繕もしないまま売れる場合があります。
そして、希望の金額にこだわった結果、売る機会そのものを逃した方もいます。
ここでお断りしておきます。
この記事は、私自身の実家じまいの体験記ではありません。
私は宅地建物取引士の資格を持ち、不動産業界で9年働いてきました。
実家をどうするかで迷っている方から、相談を受ける側の立場です。
そのかわり、私が実際に関わった4件の話を、そのままお伝えします。
うまくいった2件と、後悔が残った2件です。
読み終えるころには、何から手を付ければいいのかと、いくらかかるのかが見えているはずです。
実際にあった4件から見えた、うまくいく人と後悔する人の分かれ目
片付けも修繕もせずに売れる場合があること
仲介手数料・登記・測量にかかるお金の目安
売る前提でお話しいただく必要はありません
実家じまいで、先に知っておきたい3つ
出し惜しみせずに書きます。
この記事でお伝えしたいことは、次の3つです。
- 片付けも修繕もしないまま売れる場合がある
- 目の前の買い手は、次にもいるとは限らない
- 税の特例には、期限と条件がある
片付けも修繕もしないまま売れる場合がある
荷物が残ったまま。
草木が伸びたまま。
そういう状態でも、値段を調整すれば買い手が見つかることがあります。
「まず片付けないと売れない」と思っていませんか。
そこで止まってしまうのが、いちばんもったいない状態です。
目の前の買い手は、次にもいるとは限らない
もう少し待てば高く売れるのではないか。
そう考えて買い手を断り、結果として、そのときより安く売ることになった方がいます。
家は待っているあいだも傷みます。
買いたいと言ってくれた人が、次にもいるとは限りません。
税の特例には、期限と条件がある
相続した家を売るときに使える控除があります。
使えるかどうかで、手元に残るお金が大きく変わります。
急がなくて大丈夫ですが、期限のあるものだけは知っておいてください。
以下、4件の話とあわせて説明していきます。
いま、あなたはどの段階にいるか

ひとくちに実家じまいといっても、置かれている状況で次にやることは変わります。
大きく3つに分かれます。
KENTOご相談に来られるのは、これから相続をされる70代くらいの親御さんご本人か、その息子さん・娘さんが多いです。
| いまの状態 | 迷いの中心 | この記事で読むところ |
|---|---|---|
| A 親が元気で、まだ何も決まっていない | 話を切り出せない | 「何から始めればいいか」 |
| B 親が施設に入り、実家が空き家になった | 売るか、置いておくか | 「書かれていない2つのこと」「お金の目安」 |
| C 相続が起きて、売却を考えている | いくらで売れるのか | 「4件の話」「お金の目安」 |
A 親が元気で、まだ何も決まっていない
いちばん動きやすいのが、実はこの段階です。
家の名義人であるご本人に、希望を聞けるからです。
売るかどうかを決める必要はありません。
聞いておくだけで十分です。
B 親が施設に入り、実家が空き家になった
判断がいちばん難しいのがこの段階です。
親御さんはご存命なので、相続の話ではありません。
それでも維持費はかかり続けます。
この記事の中心は、この段階の方に置いています。
C 相続が起きて、売却を考えている
期限のある制度がいくつかあります。
先に「お金の目安」と、次の4件の話を読んでください。
なお、売ると決めたのに気持ちがついてこない方は、こちらの記事のほうが近いかもしれません。
【内部リンク】実家の売却がつらいと感じるあなたへ|思い出を残しながら、前へ進むための5つの方法
相談現場で見た、うまくいった例と後悔した例
ここからは、私が実際に関わった4件をお伝えします。
ご本人が特定できない形にしてありますが、どれも実際にあったことです。


先に、4件を一覧にしておきます。
ここから1件ずつ、何が起きたのかをお伝えします。
うまくいった話1:税の特例で、手元に残るお金が変わった
空き家になっていた実家を売却した方がいらっしゃいました。
売却額が取得した時の額を上回り、利益が出ました。
利益が出れば、通常は譲渡所得税がかかります。
ところが、その方の場合は3,000万円の特別控除が使えました。
利益は非課税になり、手元に残るお金も多くなりました。
たいへん喜んでいらっしゃったのを覚えています。
この控除は、条件に当てはまるかどうかで使える人と使えない人がはっきり分かれます。
条件は記事の後半「知っておきたい税の特例」でまとめてお伝えします。
うまくいった話2:傷んだ空き家が、次の持ち主に渡った
ずっと空き家だった家がありました。
建物はかなり傷んでいました。
庭の草木は伸び放題で、外から見ると建物が半分隠れているような状態です。
正直に申し上げて、そのままでは買い手のつきにくい家でした。


ここで持ち主の方が選んだのは、直してから売ることではありませんでした。
修繕もせず、片付けもせず、そのかわり値段を調整して売りに出すという方法です。
買い手はつきました。
その方は購入後に大規模なリフォームを行い、住める状態に戻しました。
そして入居者が決まりました。
結果として、その家は毎月家賃の入る物件になりました。
売った方は手放すことができ、買った方は収益物件を手に入れました。
買主の方からも感謝された取引でした。
「こんな状態では売れない」というのは、思い込みのことがあります。
後悔が残った話1:査定額に納得できず、売れ残った
査定を終えて、売り出す金額も決まっていた方がいらっしゃいました。
ところが、売り出す直前になって気持ちが変わりました。
「もっと高く売れるはずだ」というお気持ちが強くなったのです。
金額を上げて売り出しました。
結果は、買い手がつかないまま時間が過ぎる、というものでした。
責めているのではありません。
大事な実家に高い値がついてほしいと思うのは、自然なことです。
ただ、買い手はその家の思い出を知りません。
市場が見ている値段と、こちらの期待がずれると、買い手は動きません。


後悔が残った話2:買い手を逃し、数年後に安く売った
こちらも「高く売れるはず」と考えていた方の話です。
売り出してしばらくして、買いたいという方が現れました。
しかも、相場より少し高い金額で構わないという条件でした。
普通なら決まる話です。
それでも、その方は売りませんでした。
まだ上があるはずだ、と考えたためです。
その後、年月が過ぎました。
最終的に売れた金額は、あのとき断った金額よりも、そのときの相場よりも低いものでした。
待つことそのものが、値段を下げてしまうことがあります。
いま売るべきかどうかの相談だけでも構いません
体験ブログにはあまり書かれていない2つのこと
ここがいちばんお伝えしたいところかもしれません。
知っているかどうかで、選べる道が変わります。
片付けも修繕も測量もしないまま売れることがある
実家じまいでいちばん重いのは、片付けです。
遠方から何度も通って、何十年ぶんもの荷物を片付ける。
考えただけで気が重くなります。
ただ、次のような状態でも、売買金額を調整すれば売却できる場合が少なくありません。
- 家財や残置物が丸ごと残っている
- 建物を現状のまま引き渡す
- 契約不適合責任(=引き渡した後に見つかった不具合について売主が負う責任)を免責にする
- 境界の杭がどこにあるか分からない



残置物が丸ごと残っていても、境界の杭が分からなくても、売買金額を調整すれば売却できる場合は多いです。
もちろん、片付けたほうが高く売れる場合もあります。
そこは家の状態と、かけられる時間しだいです。
仲介手数料には、法律で上限が決まっている
仲介手数料は「言い値」ではありません。
売買の場合、取引価額に応じて上限が決められています。
さらに2024年7月から、800万円以下の空き家などについては上限が33万円(税込)と定められました。
これは「上限」であって、必ずこの金額がかかるという意味ではありません。
ポイント
800万円以下の空き家などは、仲介手数料の上限が33万円(税込)と決められています。
これは上限です。実際の金額は、依頼する契約を結ぶ前の話し合いで決まります。
実際にいくら払うかは、依頼するときの話し合いで決まります。
国土交通省も、依頼する契約を結ぶ前に金額を合意しておくことが重要だと案内しています。
もうひとつ、知っておくと選択肢が増えることがあります。
仲介手数料は、売主と買主のあいだに立って話をまとめた会社に払うものです。
つまり、不動産会社自身が買主になり、あいだに仲介する会社が入らない売買では、仲介手数料はかかりません。
実家じまいにかかるお金の目安
「いくらかかるのか」は、相談でも多い質問です。
ここでお伝えするのは、売るときにかかる費用のうち、代表的な3つです。
片付けや解体の費用、税金は含みません。
地方や郊外の実家の場合、売買価格が800万円以下になることが多くあります。
その前提でお伝えします。
| かかるもの | 目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 上限33万円(税込) | 売買価格800万円以下の場合の上限額 |
| 登記費用 | 10万〜20万円 | 名義を移すための手続きの費用 |
| 確定測量 | 30万〜40万円 | 負担する場合のみ |
この3つを合わせると、測量をしない場合で40万円台から50万円台になります。
測量をする場合は、そこに30万円から40万円が足されます。
仲介手数料は上限額で計算しているので、実際にはこれより低くなることもあります。
測量は「やらない」選択もある
確定測量は、土地の境界をはっきりさせる作業です。
やっておいたほうが買い手は安心します。
一方で、30万円から40万円という負担は小さくありません。
境界が不明なままでも、価格を調整して売却できる場合があります。
どちらがよいかは、土地の状況と、急いでいるかどうかで変わります。
迷ったら、決める前に相談してください。
知っておきたい税の特例(相続が起きたときの話)
ここからは、親御さんを見送ったあとに関わってくる話です。
いま相続が起きていない方は、そのときが来たら思い出してください。
相続した実家を売って利益が出たとき、税金を軽くする制度があります。
そのひとつが「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」です。
最高3,000万円まで控除される、金額の大きい制度です。
ただし、条件が細かく決まっています。
とくに次の3つは、知らないうちに外れてしまいやすいところです。
- 昭和56年5月31日以前に建てられた家であること。これより新しい家は対象外です
- 相続が始まった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。期限があります
- 相続してから売るまで、人に貸したり誰かが住んだりしていないこと
3つ目は見落とされがちです。
空き家にしておくのがもったいないからと、いったん誰かに貸してしまう。
その時点で、この特例は使えなくなります。
数百万円単位で変わることもあるので、貸すかどうかを決める前に確認してください。
親御さんが施設に入っていた場合でも、使える場合があります。
「亡くなる直前に住んでいなかったから無理だろう」とあきらめてしまう方がいます。
ですが、要介護認定などを受けて老人ホームに入所していたケースには、別の扱いが用意されています。


この図の2番は、覚えておいてください。
親御さんの荷物を置いたままにしていても、問題になりません。
むしろ「物品の保管に使われていたこと」が条件として書かれています。
片付けが進まないことを、後ろめたく感じる必要はないということです。
何から始めればいいか
売る話として持ち出すと角が立ちます。「もしものときに困らないように」という形なら話しやすくなります。
名義人ご本人でないと売る手続きは進みません。ここは早めに確認しておくと安心です。
手のひらに乗る大きさのものを、ひとり1つか2つ。置き場所に困らず、手に取れば思い出せます。
売ると決める前で構いません。数字が分かるだけで、迷いの半分は整理されます。
税の特例には期限があります。使えるかどうかは税理士に確認してください。



ご相談で多いのは、相続関係と登記関係のことです。名義がどうなっているか分からない、という状態からで構いません。
よくいただくご質問
Q. 実家じまいは、なぜこんなに寂しいのですか
家を手放すことが、帰る場所をなくすことに感じられるからです。
これは自然な感情で、無理に消す必要はありません。
気持ちの整理のしかたは、こちらの記事に詳しく書きました。
Q. 片付けは、どこまでやればいいですか
やらずに売れる場合もあります。
家財が残ったまま、現状のまま引き渡す形で売買が成立することがあります。
そのぶん価格は下がりますが、片付けの費用と手間もかかりません。
どちらが得かは、家の状態と、かけられる時間で変わります。
Q. 田舎の家でも売れますか
建物が傷んでいても、値段しだいで買い手がつくことがあります。
買い手は、住むためだけに家を買うわけではありません。
リフォームして人に貸す目的で探している方もいます。
ただし、価格が想定より低くなることは覚悟しておいてください。
Q. 親に、家をどうするか切り出せません
「売る話」として持ち出すと角が立ちます。
「もしものときに困らないように、どうしたいか聞かせてほしい」という形なら、話しやすくなります。
売るかどうかを決める必要はありません。
希望を聞いておくだけで、あとの判断がずいぶん楽になります。
まとめ|ひとりで決めなくていい


4件の話をお伝えしました。
- 家を直してから売る必要はありません。そのままの状態で、値段のほうを調整する道があります
- 目の前の買い手は、次にもいるとは限りません。断ってから、そのときより安く売った例があります
- 手数料には法律で上限があります。依頼する前に金額を聞いて構いません
- 相続が起きたときは、税の特例に期限があります。親御さんが施設に入っていた場合も対象になり得ます
うまくいった2件は、それぞれ違う理由で前に進みました。
1件は税の特例が使えたこと。もう1件は、直さずに値段を調整して引き渡したことです。
後悔が残った2件に共通していたのは、目の前に出ていた買い手を、次にもいると考えたことでした。
希望する金額にこだわった結果、売る機会そのものを逃した。この2件は、そういう話です。
体験ブログを何本読んでも、自分の家の答えは出てきません。
家の状態も、家族の事情も、一軒ずつ違うからです。
私がお伝えできるのも、あくまで多くの実家を見てきたなかでの傾向です。
答えは、あなたの家の話をしたときに、はじめて形になります。
当サイトでは、実家をどうするかのご相談を無料でお受けしています。
「売らないほうがいいのでは」というご相談でも構いません。
選択肢を一緒に整理するのが役目なので、売る前提でお話しいただく必要はありません。
いま決められなくても大丈夫です。
決まってからでも遅くありません。
いま決められなくても大丈夫です


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