空き家を個人で貸すのはアリ?貸すか売るかを比べる5つの確認

空き家になった木造2階建ての実家の前で、書類を手にした宅建士が立っているアイキャッチ画像

この記事を書いた人:代表相談員 kento(宅地建物取引士/不動産業界9年)
埼玉で不動産の仕事をしています。実家じまいや相続の相談を受けてきた現場の話をもとに書いています。Xでも発信中

親御さんを見送って1年ほど。
実家は空き家のままで、月に何度か風を通しに行っている。
そんなときにご家族から、「リフォームして貸せば家賃が入るんじゃない?」と言われた。

私の相談窓口にも、「実家を貸したい」というご相談は実際に届きます。

先にお伝えします。
貸すことは、現実的な選択肢です。
ただし工事を頼む前に、5つのことを確かめてください。いくらで貸せそうか。直すのにいくらかかるか。貸したあとも出ていくお金。貸したらすぐには戻れないこと。そして、売った場合にいくらになるか。

私は宅地建物取引士の資格を持ち、不動産業界で9年働いてきました。
貸した方も、売った方も、どちらも見てきました。

この記事を読むと、ご家族と話し合うために集めるべき材料が分かります。
「なんとなく貸す」でも「なんとなく売る」でもない、比べたうえでの答えに近づけます。

まずは話を聞くだけでも大丈夫です。その場で決めていただく必要はありません。

この記事でわかること

・空き家を個人で貸す前に確かめる5つのこと

・貸すか売るかを比べる順番

・貸したあとに実際に起きること

目次

空き家を個人で貸す前に確かめる5つのこと

はじめに、言葉を1つ整理させてください。

「個人で貸す」には、2つの意味が混ざっています。
1つは、持ち主が会社ではなく個人であること。
もう1つは、借りたい人を探すところから契約や管理まで、全部を自分でやることです。

この2つは別の話です。
持ち主が個人でも、募集や管理を不動産会社に任せることはできます。
この記事は前者、つまり個人の持ち主が実家を貸す場合の話として書きます。

そのうえで、工事を頼む前に確かめてほしいことが5つあります。

空き家を貸す前に確かめる5つのこと(家賃の見込み・直す費用・貸したあとに出ていくお金・すぐには戻れないこと・売った場合の金額)を並べた図解

いくらで貸せそうかを、先に知る

最初にやることは、工事の見積もりではありません。
その家がいくらで貸せそうかを知ることです。

勤務先で管理している物件でいうと、戸建ての家賃は月5万円から9万円くらいに収まることが多いです。
ただし、これはあくまで私が見ている範囲の話です。
地域、築年数、広さで差はとても大きく、同じ「築40年の木造2階建て」でも金額はそろいません。

家賃の見込みが分かると、その後の判断が楽になります。
直す費用を何年で取り戻せるかは、家賃の総額ではなく手元に残る金額で計算してください。
家賃から、固定資産税、修繕、借りる方がいない月のぶん、管理を任せるなら管理料を引いた金額です。

なお私の相談では、現地を見てから修繕費と家賃の見込みを一緒に出しています。
ご自身で先に調べるなら、家賃の見込みからのほうが早いです。

KENTO

「まず直してから考えます」とおっしゃる方は多いのですが、順番は逆をおすすめしています。

直す費用と、見えない傷みを確かめる

次に、直す費用です。

ここで気をつけていただきたいのが、見えない傷みです。
とくに雨漏りとシロアリは、見た目では分かりません。
住んでいない期間が長い家ほど、不具合に気づくのが遅れます。

内装の状態があまりにひどい場合は、工事費が膨らみます。
見積もりを取ってから判断してください。

貸したあとも、お金は出ていく

家賃が入れば、それがまるごと手元に残るわけではありません。

貸したあとも、固定資産税は持ち主が払い続けます。
必要な修繕も、原則として貸す側の負担です(原因や契約の内容によって変わります)。
借りる方がいない月は、その間の家賃は入りません。
募集や管理を不動産会社に任せる場合は、管理料もかかります。

家賃の見込みからこれらを引いて、手元にいくら残るかを見てください。

貸したら、すぐには戻れない

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

家は、貸したら好きなときに返してもらえるわけではありません。

ふつうの賃貸借契約(普通借家契約)では、借りている方の暮らしが借地借家法という法律で守られています。
貸している側の都合で「返してほしい」と言っても、正当な理由があると認められなければ、出ていってもらうことはできません。

一方で、あらかじめ期間を決めて貸す「定期借家契約」という方法もあります。
この契約なら、決めた期間が終われば契約も終わります。

ただし、正直にお伝えします。
住まいをこの形で貸す例は、私の現場では多くありません。
契約の結び方に決まりがあり、借りる方から見ると期限付きなので、家賃が下がることもあるためです。

「数年後に戻るかもしれない」という事情があるなら、この方法が合うかどうかを含めて、一度ご相談ください。

実際に私が担当した案件でも、賃貸中の家に戻りたいというお話が出たことがありました。
話し合いのなかで、貸す側の事情は正当な理由とまでは言えないという結論になり、借りている方に出ていっていただくことはできませんでした。

貸すという判断は、数年単位で家を手放すのに近い決断です。

将来、ご自身やお子さんがその家に住む可能性が少しでもあるなら、貸す前に一度立ち止まってください。
なお、個別のケースで正当な事由が認められるかどうかは、弁護士など専門家にご確認ください。

売った場合にいくらになるかも、並べておく

5つ目は、売った場合の金額です。

貸すと決めてしまう前に、一度は出しておいてください。
比べる相手がないと、家賃の見込みが高いのか安いのかも判断できません。

売る場合には、相続した空き家を売ったときの税の特例が関わることがあります。
くわしくはこのあとの「売る道が合いやすいのは、こんな場合」で触れます。

貸すか売るかは、こうして並べて比べる

「貸すのが得か、売るのが得か」に、どの家にも当てはまる答えはありません。
並べて比べると、その家の答えが出ます。

貸すか売るかを比べる6つの順番を上から並べた図解

私が相談で必ず確認する順番

ご相談を受けたとき、私は次の順番で確かめています。

STEP
ご本人が、その家をどうしたいのか

STEP
現地を見て、その場所に借りたい人の需要があるか

STEP
直すとしたら、いくらかかるか

STEP
直して貸したら、家賃はいくらになりそうか

STEP
売った場合は、いくらになりそうか

STEP
全部を並べて、総合的に考える

順番で大事なのは、最初と最後です。
最初にご本人の気持ちを聞き、最後もご本人の意向を大事にして決めます。
数字だけで決めると、あとで納得できなくなるからです。

貸す道が合いやすいのは、こんな場合

  • その家に戻る予定が、当分ない
  • 借りたい人がいそうな場所にある
  • 募集や管理を任せる先がある(全部を自分でやろうとしない)
  • 手元の現金を減らしてでも、家を残したい気持ちがある

貸す道は、家を残しながら収入を得られるのが強みです。

売る道が合いやすいのは、こんな場合

  • 草刈りや風通しなど、管理を続けるのが負担になっている
  • 直すための現金を用意するのが難しい
  • ごきょうだいと、早く清算しておきたい事情がある

ごきょうだいとの話し合いが止まっている場合は、こちらも参考にしてください。
→ 実家の相続がまとまらない|話が動き出す順番を宅建士が解説

売る場合には、税の特例が使えることがあります。
「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といって、売って出た利益から最高3,000万円までを差し引ける制度です。税金が3,000万円安くなるという意味ではありません。

ただし、対象になる家は限られています。
昭和56年5月31日以前に建てられた家であることが条件で、それより新しい家は対象外です。
期限もあり、相続が始まった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。制度そのものも、令和9年12月31日までの売却が対象です。

そして、相続してから売るまでのあいだに人に貸すと、この特例は使えなくなります。
貸してから売ろうと決めたときには、もう間に合いません。

建てられた時期は、条件の1つです。
ほかにも、相続が始まる直前の住まいの状況や、建物の状態についての要件があります。
また、令和6年1月1日以後に売る場合で、この家と土地を相続した人が3人以上いるときは、控除の上限が1人につき2,000万円になります。

対象になるかどうかは、必ず税理士か税務署にご確認ください。

出典:国税庁タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

関連記事:実家じまいで後悔しないために(特例の条件を詳しく書いています)

決めきれないなら「しばらく持つ」にも、お金はかかる

決めきれないときは、しばらく持つという選び方もあります。
ただし、持っているだけで固定資産税や火災保険、電気水道、草刈りの費用がかかります。

国が空き家の持ち主に聞いた調査では、1年間の維持管理にかかる費用はこう分かれていました。

空き家の年間の維持管理費用の分布。10万〜20万円未満が16.7%で最も多いことを示した図解

いちばん多いのは年10万円から20万円未満で、全体の16.7%でした。
「5万円未満」と答えた方は全体の47.8%で、そのうち12.1%は「費用はかかっていない」と答えています。

金額の幅は大きいので、ご実家の場合にいくらかかっているかは、納税通知書と光熱費の明細で確かめてみてください。

関連記事:実家じまいの費用は、いつ・誰が払うのか

貸したあとに起きること、相談現場で見てきたケース

貸すと決める前に、そのあと何が起きるかを知っておいてください。

夜のダイニングで、夫婦が実家の写真と書類を見ながら貸すか売るかを話し合っているイラスト

最初に一通り直したあと、大きな工事が続かなかったケースが多い

不安になる話が続いたので、現場の実感もお伝えします。

私が見てきた範囲では、最初に一通り直しておくと、そのあと数年は大きな工事をせずに済んだケースが多くありました。
そのあいだに出てくるのは、水まわりの水漏れなど、ふつうに使っていて起きる古くなりによるものが中心でした。

借り手がつくかどうかは、場所と家の状態によります。
私の経験では、タイミングによりますが決まることが多いです。
ただし、必ず決まると言い切れるものではありません。

賃料が入り続けているケースと、戻れなかったケース

相談現場でよくあるケース

ご相談のあと、勤務先の不動産会社が募集と管理を引き受け、貸家として貸し出した例は複数あります。いまも借りている方が住んでいて、毎月の賃料が持ち主に入り続けています。

この形は、持ち主がすべてを自分でやったわけではありません。
募集や管理を任せたうえで、家を貸しています。
「個人で貸す=全部ひとりでやる」ではない、ということです。

一方で、先にお伝えしたように、戻りたくても戻れなかったケースもありました。
収入が続いていても、戻りたいときに戻れるとは限りません。
この2つは、同じ家に同時に起こり得ます。

ご自身の家の場合はどうなるか、一緒に確かめましょう。

それでも貸すなら、直さずに貸せるかから考える

貸すと決めたなら、次は工事の範囲です。
私がおすすめしているのは、まず「直さずに貸せるか」から考えることです。

直す範囲を小さくできれば、その分だけ回収も早くなります。
どこまで直すべきかは、家の状態と、その地域で借りたい人が何を求めるかで変わります。

なお、この記事は選択肢を整理するためのものです。
借りたい方をお探ししたり、工事会社をご紹介したりはしていません。
必要に応じて、適切な窓口をご案内します。

よくいただくご質問

夫婦や家族と一緒に相談してもいいですか?

はい、ご一緒にご相談いただけます。意見が分かれているときほど、同じ説明を一緒に聞いていただくと話が進みやすくなります。

相談すると、何が分かりますか?

比べるのに必要な材料(見積もりや査定など)を整理し、貸したあとに出ていくお金も含めて一緒に考えます。金額そのものは、見積もりや査定を取って確かめることになります。その場で決めていただく必要はありません。

貸したら、確定申告は必要ですか?

家賃収入があると申告が必要になる場合があります。ご自身の状況で必要かどうかは、税理士か税務署にご確認ください。

空き家バンクに出すのはどうですか?

自治体が空き家の情報を登録する仕組みです。条件や手続きは自治体ごとに違うので、お住まいの地域の制度をご確認ください。

貸すか売るかは、全部並べてから決めても遅くない

最後に振り返ります。

空き家を個人で貸す前に確かめるのは、次の5つでした。

  • いくらで貸せそうか
  • 直すのに、いくらかかるか
  • 貸したあとも出ていくお金
  • 貸したら、すぐには戻れないこと
  • 売った場合は、いくらになるか

この5つを並べて、無理なく負担できる金額はどこまでかを確かめたうえで、ご実家をどうしたいかを考えてください。
数字だけでも、気持ちだけでも決まりません。

ひとりで、あるいはご夫婦だけで抱え込まなくて大丈夫です。
並べるところから、一緒にやります。

急いで工事や契約を決める必要はありません。まずは、いまの状況を聞かせてください。

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この記事を書いた人

埼玉で不動産の営業をしている宅建士9年目です。実家の相続や
 実家じまいのご相談を、現場の目線でわかりやすくお伝えします。
 Xでも発信中です。

コメント

コメント一覧 (1件)

  • […] 家の状態と、相続が起きているかどうかで変わります。相続した家を人に貸すと「空き家の3,000万円特別控除」が使えなくなる場合があるので、貸すと決める前に税理士にご確認ください。詳しくは実家じまいのブログでは書かれないことで書いています。貸すか売るかを何から比べればいいかは、空き家を個人で貸すのはアリ?貸すか売るかを比べる5つの確認にまとめました。 […]

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