親御さんを見送ってから、実家のことが決まらないまま時間が過ぎている。
ご兄弟と連絡は取っているけれど、話はいつも同じところで止まってしまう。
そんな状態で、この記事にたどり着いたのではないでしょうか。
先にお伝えします。
分け方を決める前に、①自分に当てはまる登記の期限を確かめること、②話し合いの材料を集めること。この2つから始めてください。
分け方は相手がいないと決まりませんが、この2つは自分だけで進められるからです。
私は宅地建物取引士の資格を持ち、不動産業界で9年働いてきました。
相続した実家をどうするかというご相談を受けてきました。
この記事を読むと、いま自分たちがどこで止まっているのかが分かります。
そして、明日からできることが1つ決まります。
まだ何も決まっていない状態でも大丈夫です。その場で結論を出していただく必要はありません。
・遺産分割がまだ決まっていない方へ、先にやっておくこと
・止まっている場所ごとの、次の一手
・相談現場で見てきた、動いたケースと止まったケース
※分け方はすでに決まっていて、家の使い道に迷っている方は、関連記事の「空き家を個人で貸すのはアリ?」をご覧ください
実家の相続がまとまらないときは、分け方より先に期限と材料

最初にお伝えしたい結論です。
話し合いが止まっていても、登記の期限は待ってくれません。
まず期限を確かめる。
そのうえで、話し合いの材料を集める。
この順番なら、相手の同意がなくても今日から動けます。
もめているのは、金額だけではない
ご相談を受けていると、もめている中身は大きく2つに分かれます。
1つは、金額です。
もう1つは、親の面倒を誰が長く見たかという気持ちの部分です。
後者が絡んでいるときは、話し合いが長引きます。
「同じ金額で分ける」という理屈だけでは、納得できない方がいるからです。
ご兄弟がそれぞれ弁護士を立てて争うところまで進んだケースも、実際にありました。
KENTOお金の話に見えて、実は気持ちの話だった。現場では珍しくありません。
気持ちの部分は、私の仕事では解決できません。
ただ、家に関する数字は、話し合いとは別に用意できます。
話し合いがまとまらなくても、登記の期限は動かない
相続登記(家の名義を変える手続き)は、2024年4月1日から義務になりました。
・不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請が必要です
・遺産分割(誰が何を相続するかの話し合い)がまとまった場合は、まとまった日から3年以内に、その内容の登記の申請が必要です
・2024年3月31日以前に相続が始まっていた場合は2027年3月31日まで。ただし、不動産を取得したことを知った日が2024年4月以降なら、その日から3年以内です
・正当な理由がないのに申請しないと、10万円以下の過料の対象になります
出典:法務省「相続登記の申請義務化について」
期限は人によって違います。 ご自身の場合がいつまでなのかを、先に確かめてください。
そして、話し合いがまとまらない方に知っておいてほしい制度があります。
相続人申告登記です。
自分が登記簿上の持ち主の相続人であることを、3年以内に法務局へ申し出る制度です。
登記官の審査を経て、申し出た方の氏名と住所が登記に付記されます。
これによって、申し出た方は相続登記の申請義務を果たしたことになります(法務省)。
まとまらなくても、申し出た人の義務は先に果たせます。
ただし、この申し出は名義を変えるものではありません。
遺産分割がまとまったあとに、あらためて相続登記の申請が必要です。
手続きの進め方は、司法書士か法務局にご確認ください。
家の値段は、話し合いの材料になる
相続のご相談で多いのが、「今売ったら、いくらくらいになるのか知っておきたい」というご依頼です。
相続が済む前に来られる方もいれば、済んだあとに来られる方もいます。
査定とは、不動産会社が出す売れる金額の目安です。
その金額で売れると約束するものではありませんし、取ったからといって売らなければいけないわけでもありません。
それでも、「高いはず」「二束三文だろう」と印象で言い合っている状態からは抜けられます。
実家の相続がまとまらない理由は、止まっている場所で違う
ひとことで「まとまらない」といっても、止まっている場所は家庭ごとに違います。
どこで止まっているかが分かると、次にやることが決まります。


売るか残すかで割れている場合
売りたい方と、残したい方に分かれている状態です。
ここで効くのが、さきほどの数字です。
売った場合にいくらになるのか。残した場合に毎年いくら出ていくのか。
この2つを並べると、印象の言い合いから一歩離れられます。
売る場合にかかる費用は、こちらの記事にまとめています。
関連記事:実家じまいの費用は、いつ・誰が払うのか
兄弟のうち、誰も住まない家の管理が決まらない場合
「誰も住まないが、売るのも忍びない」という状態です。
この場合は、管理を誰がやるのかが決まらないまま時間が過ぎます。
決めないままにすると、いちばん近くに住んでいる人に負担が寄ります。
草刈りや換気を誰がやるのか。費用は誰が出すのか。
ここを先に決めておくと、あとでもめにくくなります。
残す場合に出ていくお金は、別の記事にまとめています。
関連記事:空き家を個人で貸すのはアリ?貸すか売るかを比べる5つの確認
話し合いそのものができていない場合
連絡がつかない。会う機会がない。切り出しにくい。
この段階で止まっている方もいます。
その場合は、全員を集める前にできることから始めてください。
家の資料(納税通知書、登記の書類、間取りの分かるもの)を、まず1か所に集めるだけでも前進です。
資料を集めるところは、ひとりでも進められます。
実家の相続で、やってはいけない3つのこと
やらないほうがいいことを、3つだけ挙げます。
1. 家の数字を持たないまま、話し合いを何度も重ねる
2. 気持ちのわだかまりを、金額だけで片づけようとする
3. 決めないまま、空き家をそのままにする
1つ目と2つ目は、ここまでに書いたとおりです。
気持ちの部分は金額では埋まりません。 折り合いがつかないときは、弁護士に相談する道があります。
3つ目については、1つだけ補足します。
決めないあいだも、草刈りと税金はかかり続けます。
さらに、相続人のどなたかが亡くなると、その方のお子さんが話し合いに加わります。 人数が増えるほど、まとまりにくくなります。
決めない時間が長いほど、選べる道は減っていきます。
相談現場で見てきた、動いたケースと止まったケース
ここからは、私が実際に見てきた話です。
いずれも、私が勤務している不動産会社で担当した相談です。


査定を出したあと、話し合いを重ねて売却まで進んだケース
相続の前後に、ご親族が「今売ったらいくらくらいになるか知っておきたい」と相談に来られました。
勤務先の不動産会社で査定をお出ししたあと、ご親族のあいだで何度か話し合いをされました。
その結果、売却まで進んだケースがあります。
いまも販売中の物件もあります。
数字があることで、話し合いの土台ができた形です。
兄弟で決まらないまま空き家が続き、草刈りと税金が出ていったケース
反対に、決まらないまま空き家が続いたケースもあります。
続いているあいだ、主に出ていくのは草刈りの費用と税金です。
建物が残っている場合は、窓を開けて換気をする必要もあります。
遠方にお住まいの方は、ご自身の費用負担で除草作業を業者に頼まれていました。
近くにお住まいの方は、ご自分で草刈りや換気、掃除をされている方もいます。
決まらない時間にも、お金と手間はかかり続けます。
私が引き受けられないこと
正直にお伝えします。
遺産分割の話し合いそのものに、私が入ることはできません。
ご兄弟の代理で交渉することは弁護士の仕事です。
相続登記の手続きは司法書士の仕事です。
実際、「相続したいが、どうすればいいか分からない」という段階でご相談をいただくこともあります。
そのときは、必要に応じて司法書士や行政書士をご紹介しています。
登記が終わってから、あらためて売却のご相談をいただいたこともあります。
この相談窓口でしているのは、選択肢と確認することを一緒に整理するところまでです。
売れそうな金額、貸せそうな条件、持ち続けた場合にかかるお金。この部分をご案内します。
どこまでが私の役目かも含めて、最初にご説明します。
実家の相続がまとまらないときに、今日からできる順番
順番をまとめます。
上から順に進めてください。


1から4までは、相手の同意がなくても進められます。
材料のないまま集まっても、前回と同じ話になってしまいます。
同じ資料を見ていない人同士は、いつまでも別の話をしています。
よくいただくご質問
- 兄弟が遺産分割協議に同意してくれません。応じてもらえないときはどうなりますか?
-
話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や審判という道があります。手続きの進め方やご自身のケースの見通しは、弁護士にご相談ください。不動産の側からは、家の資料と金額の目安をご用意できます。話し合いが再開したときに、そのまま材料として使えます。
- 代償金(家をもらう人が、ほかの相続人に払うお金)の決め方や、損をしない方法はありますか?
-
どの家にも当てはまる「損をしない方法」はありません。できるのは、売った場合・貸した場合・持ち続けた場合の3つを数字にして比べることです。代償金の土台になる家の評価については、査定の取り方と、出てきた金額の見方を一緒に整理します(査定そのものは不動産会社が行います)。金額の取り決めは弁護士にご相談ください。
- 空き家のままにしておくと、税金は上がりますか?
-
上がる場合があります。手入れがされていない空き家は「管理不全空家等」(放っておくと危険な状態になりそうな空き家)や「特定空家等」(すでに危険な状態の空き家)とされ、市区町村長から勧告を受けると、土地の固定資産税を軽くする住宅用地特例の対象から外れます(空家等対策の推進に関する特別措置法。2023年の改正で管理不全空家等が加わりました)。判断は市区町村が行うので、実家がある市区町村にご確認ください。
- 相続してから売ると、税金の特例は使えますか?
-
一定の条件を満たすと、売って出た利益から最高3,000万円までを差し引ける特例があります(被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例。国税庁タックスアンサーNo.3306)。条件が細かいので、対象になるかどうかは税理士か税務署にご確認ください。
- まだ相続登記をしていませんが、査定だけ先に頼めますか?
-
はい、名義が変わる前でもご相談いただけます。査定そのものは不動産会社が行うので、この窓口では取り方をご案内し、出てきた金額をどう使うかを一緒に考えます。実際に、登記が終わってから売却のご相談に戻ってこられた方もいます。
- 相続した実家を10年放置すると、どうなりますか?
-
相続登記をしないまま放置すると、正当な理由がない場合は10万円以下の過料の対象になります。また、そのあいだに相続人が亡くなると、その方のお子さんが話し合いに加わり、人数が増えていきます。税金の扱いは「空き家のままにしておくと、税金は上がりますか?」をご覧ください。手続きの進め方は司法書士にご相談ください。
実家の相続がまとまらないまま、時間だけが過ぎないように
振り返ります。
- まず、自分に当てはまる登記の期限を確かめる
- まとまらないときは、相続人申告登記という申し出の制度がある
- 家の数字(売った場合・持ち続けた場合)を材料としてそろえる
- 止まっている場所によって、次の一手は変わる
- 全員が同じ資料を見てから話す
決まらない時間にも、草刈りと税金はかかり続けます。
ただ、焦って今日すべてを決める必要はありません。
まずは、期限の確認と資料集めからで大丈夫です。
そこから先は、一緒に考えます。
ご兄弟と話す前の段階でも大丈夫です。まずは、いまの状況を聞かせてください。





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