実家をどうにかしなければと思いながら、いくらかかるのか分からなくて動けない。
そんな状態になっていませんか。
片付けに、解体に、手続きに。
どれも大きな金額になりそうで、そんなお金はないと感じてしまいますよね。
先にお伝えします。
売るときにかかる費用は、売れた代金を受け取った日に、そこから払う進め方ができます。
私が担当する売却では、契約のときまで売主さんが払うお金はありません。
ですから「まとまった現金がないから、実家じまいを始められない」ということには、必ずしもなりません。
私は宅地建物取引士の資格を持ち、不動産業界で9年働いてきました。
この記事では、実際に担当した売却で見ている金額と、そのお金がいつ出ていくのかをお話しします。
読み終えるころには、どの費用を、いつ、誰が払うのかの見当がつくはずです。
売るかどうか決まっていなくても大丈夫です。
まずは話を聞くだけでも構いません。
・現況のまま売る場合と、更地にして売る場合の費用の差
・仲介手数料・片付け・測量の目安と、登記費用を売主と買主のどちらが払うのか
・費用をいつ、誰が払うのか。先に現金が必要になるのはどこか
実家じまいの費用を、決済の日にまとめて払う進め方

いちばんお伝えしたいのは、費用の総額よりもお金が出ていく順番です。
「先に何百万円か用意しないと始められない」と思っていませんか。
実際には、そうならない進め方があります。
契約のときには、まだ払うお金がない
私が勤めている不動産会社で担当する売却では、費用の支払いをすべて決済の日にそろえています。
決済の日とは、買主が売買代金の全額を支払い、売主が司法書士の用意した書類に実印を押す、その同じ日のことです。
つまり、売買契約を結んだ時点では、売主さんが払うお金はまだありません。
KENTO金額も高額になり得るので、売買代金が振り込まれてから、そこから用意していただくようにしています。
決済の日には、全額を払う
決済の日に、すべての費用をまとめて払います。
その日に売買代金が振り込まれます。
売主さんは振り込まれたお金を引き出して、そこから残置物の撤去費、解体費、測量費、仲介手数料を払います。
これが実際の流れです。
解体して更地にしてから引き渡す場合も同じです。
解体業者に事前に承諾をもらったうえで、支払いを決済の日まで待ってもらっています。
ここは大事なところなので、正直に書きます。
これは自動的にそうなるものではありません。
「決済まで待ってもらえるように話をつける」という一手間があって、はじめて成り立ちます。
実家じまいのお金がないときは、支払いの時期と売り方を確かめる
私が担当する売却では、手元にまとまった現金がないと動けない、という状態にはなりません。
理由は2つあります。
契約のときまで支払いがないこと。
そして、かかる費用が売却代金を上回らないように進めることです。
費用が売却代金を上回りそうなときの進め方は、このあと「更地にすると」の節でお話しします。
ただし、支払いのタイミングは不動産会社によって違います。
売買契約のあとに全額を受け取る会社もあります。
ですから、依頼を決める前に「費用はいつ払うことになりますか」と聞いてください。
この一言で、手元のお金の動きが変わります。
売却で確認しておきたい実家じまいの費用


ここからは、実際の金額です。
地方や郊外の実家は、売買価格が800万円以下になることが多くあります。
その前提でお話しします。
仲介手数料は、国のルールで上限が決まっている
仲介手数料は言い値ではありません。
取引価額に応じて、受け取れる上限が決められています。
さらに2024年7月から、売買価格が800万円以下の家や土地については、上限が33万円(税込)と定められました。
| 売買価格 | 原則の上限(税込) | 800万円以下の特例の上限(税込) |
|---|---|---|
| 300万円 | 15万4,000円 | 33万円 |
| 500万円 | 23万1,000円 | 33万円 |
| 800万円 | 33万円 | 33万円 |
表を見て、おかしいと思われたかもしれません。
価格が低い家ほど、特例のほうが上限は高くなります。
安い家は手間に対して手数料が見合わず、引き受け手が見つからないという問題がありました。
空き家を流通させるために、国が上限を引き上げたという経緯です。
売る側から見れば負担が増える話です。
それでも「引き受けてもらえない」よりは前に進む、とご理解いただければと思います。
登記の費用は、売主と買主で分かれる
売却にともなって、登記の手続きが必要になります。
意外に思われるかもしれませんが、名義を買主に移す「所有権移転登記」の費用は、買主の負担です。
だいたい10万円から20万円ですが、これは売主が用意するお金ではありません。



所有権移転登記の費用は買主さん、抵当権抹消や相続登記の費用は売主さんの負担になります。
売主が負担するのは、次の3つの登記です。
必要になるかどうかは、家の名義の状態で決まります。
| 登記 | 必要になる家 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 抵当権抹消登記 | 住宅ローンの抵当権が、登記に残ったまま | 1万3,000円ほど |
| 住所変更登記 | 登記の住所から引っ越している | 1万3,000円ほど |
| 相続登記 | 亡くなった親の名義のまま | 物件によって変わる |
金額は、私が依頼している司法書士の場合の目安です。
相続登記は家や土地によって変わるので、司法書士に見積もりを取ってください。
実家じまいの片付け費用は30万〜80万円
地方の実家の場合、業者に頼んで30万円から80万円ほどかかります。
幅が広いのは、家財の量で変わるからです。
測量は「やらない」選択もある
確定測量は、土地の境界をはっきりさせる作業です。
負担する場合は30万円から40万円かかります。
やっておいたほうが買い手は安心します。
一方で、この金額は小さくありません。
境界が分からないままでも、価格を調整して売却できる場合があります。
更地にすると、実家じまいの費用は桁が変わる


建物を解体して更地にする場合、200万円から300万円ほどかかります。
木造2階建て、築40〜50年くらいの家を想定したときの目安です。
金額を左右するのは、建物の面積や外構の状況です。
3つの道で、売主が払う費用は変わる
同じ実家でも、進め方によって費用はまったく違います。
| 進め方 | 売主が払う費用の目安 |
|---|---|
| 現況のまま売る(片付けもしない) | 33万円 |
| 片付けてから売る | 63万〜113万円 |
| 解体して更地にして売る | 263万〜413万円 |
仲介手数料(上限の33万円)・片付け・解体の費用を、単純に足した試算です。
測量をする場合は、ここに30万〜40万円が足されます。
抵当権抹消登記・住所変更登記・相続登記が必要な家では、その費用も売主の負担で加わります。
ただし、現況のまま売る場合は、片付けや解体にあたる金額を売買金額から引くことが多くあります。
払う費用だけを見ると現況のまま売るのがいちばん安く見えますが、そのぶん売値も下がります。
更地にするかどうかが、費用を決める一番大きな分かれ道です。
費用が売却代金を上回りそうなら、解体せずに現況のまま売る
金額を見て、不安になった方もいると思います。
売れる金額より、費用のほうが高くなってしまうのではないか。
解体するかどうかは、解体費だけでなく、片付けや仲介手数料まで足した費用と、売れる見込みの金額を比べて決めます。
私の担当した売却では、かかる費用が売却代金を上回ったことはありません。
上回りそうな場合は、解体をしない方向で、現況のまま引き渡す形にしています。
「まず片付けないと売れない」と思っていませんか。
そんなことはありません。
- 家財が丸ごと残ったまま
- 草木が伸びたまま
- 境界の杭が分からないまま
それでも売買金額を調整すれば、そのまま引き渡して売却できる場合が多いです。
片付けの費用がないから動けない、という状態ではないということです。
その場合は、先ほどお伝えしたとおり、片付けや解体にあたる金額を売買金額から引いて調整します。
実家じまいの補助金は、自治体ごとに違う
自治体によっては、解体費用の補助金を設けているところがあります。



解体費の補助金を使われた方は、これまでいらっしゃいません。
条件や予算は自治体ごとに違います。
お住まいの自治体の窓口で確認していただくのが確実です。
実家じまいの費用は、誰がいつ払うのか


金額とあわせて、費用を誰が出すのかも決めておく必要があります。
売主と買主のあいだで、2つの型がある
実務では、次のどちらかになることが多いです。
| 型 | どうするか | 引き渡す状態 |
|---|---|---|
| 差し引いて清算する | 売買代金から解体費や残置物の撤去費を引く | 現況のまま |
| 代金に乗せる | 費用を売買代金に乗せ、売主の負担で解体する | 更地にして |
1つ目は、買主がその費用を引き受ける形です。
2つ目は、売主が負担して、きれいな状態にしてから渡す形です。
どちらになるかは、家の状態や買主の希望によって変わります。



最初に負担区分を決めて、契約書にも明記しておかないと揉めます。
兄弟がいる場合は、代表の方が払うことが多い
相続が起きたあとで相続人が複数いる場合、1人が窓口になって、その代表の方に支払っていただくことが多いです。
そのあと兄弟のあいだでどう分けるかは、ご家庭によって違います。
兄弟で話がまとまらないときに、先にできることはこちらにまとめています。
→ 実家の相続がまとまらない|話が動き出す順番を宅建士が解説
書面に残しておく
どちらの型で進めるかを、契約書に書いておくことです。
言った言わないになるのを防げます。
どの型で進めるべきか、家の状態を聞かせていただければ一緒に整理します。
「思ったより高い」と感じたときにできること


最近は、費用をお伝えすると「思ったより高い」と言われることが多くなりました。
相見積もりを取る、値引きの交渉をする
そう言われたときは、各業者へ値引きの交渉をしたり、相見積もりを取ったりすることがあります。
必ず下がるとは言えません。
ですが、聞いてみる価値はあります。
仲介手数料は上限であって、決まった額ではない
先ほどの33万円は上限です。
この金額が必ずかかるという意味ではありません。
実際にいくら払うかは、依頼するときの話し合いで決まります。
国土交通省も、依頼の契約を結ぶ前に金額を合意しておくことが重要だと案内しています。



あまりにも売買金額が少なくなってしまった場合は、仲介手数料を値引きすることもあります。
相手が不動産会社なら、仲介手数料がかからない場合がある
仲介手数料は、売主と買主のあいだに立って話をまとめた会社に払うものです。
つまり、不動産会社自身が買主になり、あいだに入る会社がいない売買では、仲介手数料は発生しません。
よくいただくご質問
- 費用は、兄弟で分けて払うものですか
-
相続が起きたあとで相続人が複数いる場合は、代表の方がまとめて支払うことが多いです。兄弟での分け方で迷われたら、弁護士などの専門家にご相談ください。
- 解体の補助金は使えますか
-
自治体によって制度も条件も違います。私が担当した中では、補助金を利用した方はいません。お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
- 売るのと貸すのは、どちらが得ですか
-
家の状態と、相続が起きているかどうかで変わります。相続した家を人に貸すと「空き家の3,000万円特別控除」が使えなくなる場合があるので、貸すと決める前に税理士にご確認ください。詳しくは実家じまいのブログでは書かれないことで書いています。貸すか売るかを何から比べればいいかは、空き家を個人で貸すのはアリ?貸すか売るかを比べる5つの確認にまとめました。
- 業者はどう選べばいいですか
-
相見積もりを取ることと、誰が何を負担するのかを書面にしてくれるかどうかを見てください。
- 費用の平均はいくらですか
-
この記事では、全国の平均ではなく、私が担当した売却で見ている目安をご紹介しています。進め方で大きく変わるので、ご自分の家に近い金額を見てください。
まとめ|ひとりで計算しなくて大丈夫
実家じまいの費用は、進め方によって数十万円にも数百万円にもなります。
ですが、いちばん大事なのは総額ではありません。
そのお金を、いつ、どこから払うのか。
支払いの時期と、売れる金額の見込みを確かめれば、必要な現金を整理できます。
もう一度、要点だけ振り返ります。
費用の項目と支払いの時期が整理できたら、次は「自分の家はいくらで売れそうか」です。
ひとりで電卓を叩かなくて大丈夫です。
家の状態を聞かせていただければ、どの進め方が向いているかを一緒に整理します。
急いで決める必要はありません。
話を聞くだけでも、頭の中が整理されます。





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